よいアンケートの作り方(ガイド)
From LimeSurvey Manual
よいアンケートを作るための簡単なガイド
LimeSurvey を使えば、アンケートをすばやく簡単に作成できます。残念ながら、そのせいで悪いアンケートを作るのも、とても簡単になってしまいます。
このページには、回答者が簡単に完了できるだけでなく、集計する側が意味のある回答を得られるアンケートをまとめるための簡単なガイドを記載しています。
ブログ、「Survey design tips & tricks(アンケートデザインのコツと技)」では、この他のとても役に立つ情報を掲載しています。
アンケートを作る前に
最初にいくつか質問します。どんなアンケートでも作りはじめる前に考えておいてほしいことです。そもそもアンケートが適切な方法なのかも含めて。
アンケートで本当に知りたいことは何ですか?
この質問に答えた上で、次の点について考えてください。
- アンケートで調査に必要な情報を得られるか?
- どんな人物にアンケートに回答してもらうのが適切か?
- 適切な人たちにどうすればコンタクトできるか?
- 参加者がアンケートの質問を完璧に理解したうえで回答を完了するための最適な方法は?(得た情報が正確・有用であるために)
- (データ分析の)統計的手法について、収集したデータにどれを用いたい、もしくは用いる必要があるか?
こうした質問・確認は、LimeSurvey が最適な道具かどうかを判断する際にはっきりさせておくべき点のほんの一部です。
完全に構造化されたアンケート(面談をはじめる前に尋ねるべき質問がすべてわかっている)、標準化されたアンケート(全員がほぼ同じ質問を受ける)、ほとんど定量的なアンケート(質問項目が主に数字や、事前に選択肢が定まったもの)…LimeSurvey はこうしたアンケートをオンラインで収集するのに最適です。
もちろん、ある程度はこの限りではありません。 LimeSurvey はいくつかの種類の電話での聞き取りの回答を収集するのにも使えます。 LimeSurvey で記述型の質問などの定性的なデータを収集することもできます。
しかし、ある時点で、他の調査方法の方が適しているという結論になるかもしれません。
アンケートの構成
質問の順序をどうするか、どう質問をグループ化するかを決めるには、考えるべき点があります。
なるべく、はじめは答えるのが簡単で、参加者全員が答えるのに不快と感じない質問から尋ねます。こうした質問は、よくスクリーニング(ふるい分け)の質問として使われます。つまり、適切な人に回答してもらうための確認として用いる質問です(こうしたスクリーニングの質問を取り扱うには、条件 ・ 割り当て のいずれか、または両方を使います)。
最初にこの種の質問をすると、参加者がアンケートの回答を完了する前に離れてしまうのを防ぐことができます。こうした導入・スクリーニングの質問に答える労力をすでに費やしてしまったことで、多くの人は作業を中断する可能性が低くなるからです。
例:
次のくだもののうち、どれが好きですか?
#りんご()
#バナナ ()
#さくらんぼ ()
(単一回答)
条件を使うと、参加者が「さくらんぼ」を選択したら、次にさくらんぼについての質問を表示するように設定できます。
なぜ、さくらんぼが好きなのですか?
#おいしいから
#色が大好きだから
#健康的だから
#みずみずしいから
#チェリーパイが大好きだから
(複数回答――正確なデータが必要であれば単一回答――の質問)
さくらんぼは、どのくらい好きですか?
#1) 他のくだものほど好きではない
#2) 他のくだものよりも好き
#3) 大好きなくだものの1つ!
#4) さくらんぼが大好きだ~っ!!!
(単一回答)
さくらんぼを使ったレシピを何か知っていますか?
[記述]
上記は、つづくメインの質問への導入として配置する簡単な質問の例です。
目的は、さくらんぼ、りんご、バナナを使ったレシピを集めることにあります。
一方、ハードな質問を尋ねなければならない場合は、質問や質問グループごとにページを改めたり、最後にそのような質問をすることを考えてもいいかもしれません。こうすれば、もし参加者がアンケートを完了しなかったとしても、少なくともそれまでの回答は保存されます。
構成について考えるべきその他の点 - アンケート自体がもたらすバイアス(先入観や刷り込み)を避けること。
たとえば市場調査では、補助なしの質問と補助ありの質問を必要とする概念があります。
補助なしの質問の例は次のとおり :
「あなたが知っているチョコレートのブランドは何ですか?」
(つづいて空白のテキストボックス)
以下は、補助ありの質問の例 :
「次のチョコレートのブランドのうち知っているのはどれですか?」
(つづいてブランドのリスト・複数回答)
前述したように、両方のタイプの質問(補助ありと補助なし) を同じアンケートに含めることを選んだ場合は、両者を必ず別のページに配置し、補助なしの質問を補助ありの質問の前に配置しなくてはなりません。補助ありの質問を補助なしの質問の前に置くと、参加者の回答に無意識に影響を与え、結果が無効になるかもしれません。
独立した質問
質問は示唆的であってはなりません。「LimeSurveyについてどう思いますか?」は、承認できる(示唆的ではない)質問です。一方、「LimeSurvey が本当にすばらしいツールであることに同意しませんか?」は示唆的な質問です。
質問の表現に関するその他の例と提案 :
次のように質問すると、多くの人は寄付に「はい」と答えるかもしれません:
- 「自然は好きですか?」
- 「川を守るために寄付しませんか?」
次のように質問すると、多くの人はおそらく「いいえ」と答えるでしょう :
- 「お金が足りなくて悩んでいますか?」
- 「川を守るために寄付しませんか?」
適切な回答を求めるために、質問の順序を次のようにします :
- 当たり障りのないものからセンシティブ(敏感)なものへ
- 一般的なものからより具体的なものへ
- 事実についての質問から意見を聞く質問へ
また、アンケートの質問は以下の通り大別できます :
- 自由回答 (回答者が自分の言葉で回答)
- 限定回答 (限られた数の選択肢から選ぶ)
限定回答は、分析がはるかに簡単ですが、回答者が本当に望む選択肢を用意できないかもしれません。
例 : 「好きな色は何ですか?」
自由回答: 「ダークフューシャ」と答える人がいるかもしれません。結果に「ダークフューシャ」の分類を作らなければなりません。
限定回答: 12種類の色から選ばせれば集計は楽です。しかし、回答者が本当に好きな色を選べないかもしれません。
各々の質問を慎重に検討し、自由回答にするか、限定回答にするかを決定します。回答についてより深い洞察が必要な場合は、自由回答の質問を使用してください。そうでない場合は、限定回答の質問を使用します。
例(自由回答) : 「川をきれいにする最善の方法は何だと思いますか?」
「自由回答」にする : 回答を表やグラフにまとめるのは簡単ではないでしょう。しかし、川や環境の浄化に対する人びとの感情や考えについて深い洞察が得られ、レポートに直接引用できるかもしれません。
例(限定回答) : 「どのくらいの頻度で川に行きますか?」
次の選択肢を使って「限定回答」にする :
- ほぼ毎日
- 少なくとも年に 5 回
- 年に 1 ~ 4 回
- ほとんどない
このデータはきれいな棒グラフで表すことができます。
複数選択または単一選択の質問を扱う場合は、必ず適切な質問の種類を選択し、質問と選択肢の両方を適切に作成してください。
例 :
次のくだもののうち、どれが好きですか?
#りんご ()
#バナナ ()
#さくらんぼ ()
上の例は、選択肢の中に好きなものが複数あり得るので、典型的な複数選択の質問です。一方、「次のくだもののうち、どれが一番好きですか?」は単一選択の質問です。
どちらのくだものの例も、あなたの関心がリスト内のくだものだけにあることをはっきりさせるために定式化しています。「あなたの好きなくだものは何ですか?」と尋ねる場合は、くだものの完全なリストを用意するか、より一般的に、LimeSurvey の設定を使用して「その他」項目を追加する必要があります。一般的に、回答の選択肢は完全で、相互に排他的で、明確である必要があります。
複数回答または単一回答の質問で、多数の選択肢から選択する場合、別のバイアスを生じる可能性について注意しなければなりません。参加者は中ほどの選択肢ではなく、最初の選択肢に注意をむけがちだからです。LimeSurvey には、質問の選択肢の順序をランダムにすることで、この問題をある程度解消する優れた設定を提供しています。
どうしたらよいアンケートになるか?
正確な評価に欠かせない適切な回答を収集する、よいアンケートの特徴は 3 つあります:
- 質問は明確かつ正確で、詳細で明確かつ有意義な回答を可能にする。
- すべて事前定義された選択肢が提供され、その形式は質問に適している。
- 必要に応じて追加情報を追加する余地がある。
それにくわえて、ユーザーエクスペリエンスを常に考慮しましょう。読み、スクロールし、クリックするのは疲れる作業です。そのために… :
- 不必要な質問を避ける。
- 条件を使って、特定の回答者に関係ない質問を避ける。
- 質問・選択肢は短く・読みやすく。適切なマークアップを使用する。
- スクロールとクリックのトレードオフを考慮する。短いアンケート(質問の複雑さによるが、5~15問程度)は 1 ページに表示する。長いアンケートではグループを賢く使う、つまり質問をわかりやすくグループ化する。グループの説明を使って、あとに続く質問の話題・テーマについて明確に説明を加える。
- さまざまな異なるスケールで回答者を混乱させないようにする。つまり、スケールの種類、スケールの範囲、スケールの説明をできるかぎり制限する。スケールの方向を変えないように注意する(方法論的に例外はある)
- 採点スケールの場合は、回答者の意思決定を容易にするために、選択肢を偶数にすることでいずれかの方向を選ばなければならないようにすると便利な場合がある(下記、参照)。
いかに「いいか」の選択肢スケールの例 :
1. 非常によい
2. よい
3. 少しだけよい
4. あまりよくない
5. よくない
6. 非常によくない
いかに「悪いか」の選択肢スケールの例 :
1. よい
2. どちらでもない
3. よくない
アンケートの設計をはじめるベストな方法は、理想的な回答を、少し想像してみることです。意味のある回答が最も有益であることは言うまでもないので、そのような回答をうながす質問を作成するようにしてください。
そのためにはどうしたらよいでしょう? すべての領域を分離し、必要な情報は何かを決めることが最善の方法です。
例えば、一般公開のイベントを開催し、そのイベントについての一般的なフィードバックを得る必要があるとします。
次のアンケートは、有用な回答を引き出すのに不十分と思われるアンケートの例です。
イベントは楽しかったですか?
( ) はい
( ) いいえ
無線 LAN はどのくらい快適でしたか?
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( )
イベント会場に着くまでに問題はありましたか?
( ) はい
( ) いいえ
配布した地図は役に立ちましたか?
( ) はい
( ) いいえ
出演者の組み合わせについてはどう思いましたか?
( ) とても悲しい ( ) 悲しい ( ) どちらでもない ( ) 幸せ ( ) とても幸せ
上記のシナリオでは、配列回答の方が適しています。
配列回答
原則として、スケールは年齢、時間等、または数量についての質問にだけ使うすべきです。有用なフィードバックを得るためには、配列回答の文言を適切にすべきです。配列回答は、構成が適切でないと追加的な情報を提供することができないため、回答者に抵抗を感じさせる場合もあることに注意してください。
フィードバックを提供したいと考えて、アンケートに回答しようとしている人にとって、「役に立つ情報を共有できる」と思えなかったら、ウィンドウを閉じてアンケートから離れてしまうでしょう。
では、上記のアンケートの何がよくないのでしょうか?
それぞれの質問を見ていきましょう。
質問 1 では実際には何も得られません。100 件の「いいえ」の回答を受けとったらどうでしょう? この回答だけでは、参加者がイベントを楽しめなかった理由について有益な情報を得られません。「いいえ」の回答の理由がわからず、また「いいえ」の回答をどうすればよいのか悩むことになるでしょう。改善点については後述します。
質問 2 は最初のものよりも悪いです。前のセクションの「よいアンケートの 3 つの特徴」を振り返ると、質問は明確かつ正確でなくてはなりません。私は無線 LAN の専門家ではありませんが、これを測定するよりよい方法はいくつもあることは間違いありません。さらに、「33% の人たちが『よい』と答えた場合と、それが23%だった場合と比べて、あなたがなすべき行動に違いはありますか?」といった問いに役に立つ答えは得られません。よいアンケートの 3 つの特徴には、すべて事前定義された選択肢が提供され、その形式は質問に適している、とも記されています。
この質問にスケールを使っても、無線 LAN の品質向上に役立たないことは明らかです。この質問には、回答者が追加情報を記入できる欄が必要です。どうやったら詳しい説明をせずに、具体的な問題を報告できるのでしょうか?
この例では、参加者が無線 LAN に抱えていた問題に適切に対処するための情報を得ることはほぼ不可能です。アンケートは、行動したり学んだりするために、役に立つ情報を得るものです。
質問 3 と 4も、先の 2 つの質問と同じ結果になります。両者とも「はい」か「いいえ」でしか答えられず、どちらも詳細を追加することができません。このセクションの後に、こうした質問の改善方法を提案します。
最後の 質問 5 もまた意味のない質問です。何かの満足度を尋ねるのはあまり有益ではありません。なぜなら一人ひとり関心が異なり、全員が各講師に対して異なる意見を持っている可能性が高いからです。これは使うべきでないところで「スケール」を使っているもう一つの例です。
改善したアンケートを見てみましょう。
場内の無線 LAN を使いましたか?
( ) はい
( ) いいえ
無線 LAN で問題が起きましたか?
( ) まったく問題ない
( ) 少々の問題はあったが、大したことはない
( ) いくつか重大な問題があった
( ) 無線 LAN は使いものにならなかった
問題が発生した場合は、簡単な説明をお願いします。(テキストフィールド)
イベント会場に着くまでに問題はありましたか?
( ) はい
( ) いいえ
会場にはどのように来ましたか?
( ) JR
( ) 車
( ) バス
( ) その他の鉄道(私鉄、地下鉄)
( ) 徒歩
公式ウェブサイトの地図を使いましたか?
( ) はい
( ) いいえ
地図をご覧になって、十分詳細に記載されていましたか?
( ) はい
( ) 大まかな情報は得られたが、詳細は別の地図を使った
( ) 不十分だった
公式サイトの地図を使わなかった方は、なぜ使わなかったのですか?
( ) 詳細が不十分だったから
( ) iPhone のマップ・Google マップ を使った
( ) 地図があることを知らなかった!
全体として、講演者はおもしろかったですか? スライドは楽しめましたか?
( ) ほとんどが興味深く、とても楽しかった
( ) 大体楽しめたが、つまらないものもあった
( ) 半々だった
( ) おもしろいよりも退屈な方が長かった
( ) おもしろいものはまったくなかった
上記の質問に対する答えについて、詳しくお聞かせください。どのようなことでも、ご自由にご参照ください。
特定の人・話の内容について。 (テキストフィールド)
話題の範囲の改善点、またはその他の興味深いアイディア
講演内容について。以下にリスト(テキストフィールド)
その他、ご要望やご意見があれば、以下にお書きください。 (テキストフィールド)
アンケートは少し長くなりましたが、回答するのも回答を解釈するのも、はるかに容易になりました。話題・テーマごとに 2 ~ 3 の聞くことにより、結果を処理する際により詳しく分析できるようになります。例えば、最初のアンケートの質問で、30人がイベント会場に着くまでに何らかの問題があったと回答したとします。
これが結果から得られるかぎりの情報でしたが、新たな選択肢のセットで、どの交通手段に問題があったのかを推測することができます。さらに、参加者が提供した地図を使ったか、あるいは別の地図やアプリを利用したかがわかり、今後の改善の対象にすることもできます。
50 個の質問に回答を終えると、参加者はもう読むのをやめてしまう可能性が高くなります。お忘れなく。
テキストフィールドの質問(記述回答)を新たに加えたことも重要です。参加者が具体的なフィードバックを提供し、これを参考にできるようになりました。必須項目にすると回答そのものをやめてしまうかもしれないので、任意とするのがよいでしょう。
結論として、アンケートを作成するときは、分析により役立つ情報を多く得るため、具体的な質問をするアンケートにすることをめざす必要があります。また、わずかでも追加的な背景情報を収集すると、回答のよりよい分析に役立つ手助けとなることも覚えておきましょう。
質問を適切に表現することも重要です。質問に答えようとしていても、質問を理解できなければウィンドウを閉じて行ってしまいます。できるだけアンケートを公開する前に、質問が明確であるかどうか、他の人に校正してもらってください。
アンケートのバイアス
市場調査を実施する際、偏りのない回答を得るための重要なカギは、アンケート参加者の回答に影響を与える可能性のある質問を避けることです。アンケートのバイアス(偏り・先入観)を避けることで、役に立たないゆがんだデータ収集につながる回答を排除できます。 適切な市場調査の訓練や知識のない企業や個人は、こうしたミスを犯しがちです。質問の表現、選択肢の内容や種類、また電話や対面での場合のインタビュアー(質問者)の質問のしかたなど、さまざまなことがその要因となります。
バイアスがかかった質問の例 :
イベントはどの程度楽しかったですか?
( )とても楽しかった
( )少し楽しかった
( )それほど楽しくなかった
( )まったく楽しくなかった
一見すると、この質問の構造に問題はなさそうです。全体として、回答者に「とても楽しめた」から「まったく楽しめなかった」までの範囲で選択肢が用意されています。しかし、問題は質問の表現です。参加者にイベントを「どの程度楽しかったか」と聞くことで、参加者が程度の差はあれ楽しかったと仮定しており、バイアスを発生させています。実際は楽しくなかった可能性もあるのに。
参加者の回答に影響を与えない、よりよい質問の例 :
全体的としてのイベントの楽しさを 1 ~ 5 で評価してください : 1 =「まったく楽しくなかった」、5 =「とても楽しかった」
1 2 3 4 5
( ) ( ) ( ) ( ) ( )
質問文の表現を変え、スケールで回答するようにしたことで、回答する側は楽しさのレベルを決めやすくなり、アンケートを実施する側は結果を集計したり他の回答結果と比較したりといったことがやりやすくなりました。もちろん、参加者にとって何が楽しかったのか・楽しくなかったのかを具体的に聞くの質問をさらに増やすべきでしょう。
これは、文言を少し変更することでアンケートがどのように改善されるかを示す一例にすぎません。